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駄文置場という名の虚無空間です

 

よし、虚無ろう

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Category:紅の標

駄文連載『プロローグ』 



 序/外宇宙太陽系銀河 第14惑星エイト


 目の前に、砂の大地が広がっていた。
 眼を凝らせば地平線の彼方……その向こうにまで無限に続いているかのように思える枯れた砂漠の世界。火傷しそうなほど熱い砂と、熱を帯びた風、憎らしいほど澄んだ藍色の空に、この星を乾かせた"二重恒星太陽"が燃え盛っている。

 "まるで死の星だ……"

 この星に降り立った最初の感想はそれだった。
 男は砂丘の真ん中にいた。先ほどこの星にやって来たばかりの男は、街を目指して砂の海を歩く。体を包む土色の外套を小粒の砂を含んだ風が叩く。生物が生きるには、厳しい環境だった。
 砂丘をふたつ越えた辺りで、砂一色の大地にそれを見止めた。横たわる人型のシルエット……それは事実、人であり、今にも息が途絶えんとした遭難者だった。

「しっかりしろ……!」

 男は遭難者に駆け寄り、その体を抱き起こした。"地球の一般的な成人男性"ほどに見えるその遭難者の体はひどく軽く、長らく陽に晒されていたのだろう、肌がかさついて唇は乾き切り、吐く息はか細く、意識が朦朧としているようだった。
 男は外套の下から水の入った水筒を取り出し、それを遭難者の口に宛がおうとした。矢先――

「勝手な事するもんじゃねえよ」

 ――背後から聞こえてきた言葉に、その手を止めた。
 振り返ると同時に、鉄の塊が男の前に滑り込んで来た。黄土色のボディに鉄の板と板とを繋ぎ合わせただけのような平たい車体、剥き出しのホバーエンジンを低い唸らせて、熱砂を吹き散らしながら停止したその鉄の塊はこの星の乗り物なのだろう、随分と使い込まれて錆が浮き出ている。屋根の無いそれは、地球でいうトラックの荷台が浮いているようなものに近い。その中から銀色の肌をした男が二人、嫌らしい笑みを浮かべてこちらを覗き込んでいた。

「あんた、そいつを助けよってのか」

 一人が、顎をしゃくって砂の上に倒れ伏せている遭難者を指した。

「ああ」

 外套を纏った男は、土色のそれを眼深く被ったまま、静かに頷いて返す。もう一人の銀色の男が甲高い笑い声を上げた。

「ひゃはは!あんた余所者(よそもん)だろ?」

「ちがいねえ、この銀河系でそんな事しようなんてやつぁ、いねえもんな」

 二人の男はそれぞれに、外套の男を酔狂な者を見る眼で舐め回すように観察し、「あんた誰の許しを得てそんな事しようってんだ」と嘲笑じみた声色で言う。

「許し? この星では、人を助けるのに許可がいるのか」

「あったりまえだ。ザンギャックの許しもなしにそんな事してみろ、お前もそいつと同じ醜態を晒すぜ」

 銀色の男の眼が、侮蔑の色を宿して遭難者へ向けられる。

 ――ここでも"ザンギャック"か。

 行く先々の星で耳にするその名……この銀河もまた、奴らの支配下にあるらしい。
 外套をいっそう深く被り直した男は再び遭難者へと向き直ると、今度は躊躇することなく水筒の水を遭難者の口元に宛がった。注がれる冷ややかな水に気付いたのか、乾いた唇が僅かながらに動くのを見て、男は内心安堵する。

「あーあー、やっちまったなあんた」

「ザンギャックの連中はすぐにでも来るぜえ」

 銀色の頬を吊り上げ、楽しそうに男達が告げる。その言葉通り、ものの数分のうちに砂丘の彼方から飛行艇が飛んでくるのが見えた。灰色の船体に大きく掲げられた紋章……ザンギャックの戦闘機であることを表すそれを見て、銀色の男達は「ほれみろ」と笑った。
 戦闘機が男達の上空に差し掛かると、三つの影が砂丘へと降下してきた。機械化された灰色のボディに屑鉄の装甲を打ち付けてでっち上げたようなザンギャックの哨兵『ゴーミン』が二体と、それらの統率を任された『スゴーミン』が一体。砂煙を上げて着地した三体は、真っすぐに外套の男達のもとへと歩み寄った。

「この周辺で、我々ザンギャックの許可無くエイトに降下する船を捉えた」

 藍色のボディに両腕が末端肥大化したシルエットを持つスゴーミンは、鋭い双眸で銀色の男達を一瞥する。思わず身震いして己の潔白を表そうとした二人を尻目に、スゴーミンはその腕を振り上げて外套の男を指した。

「貴様のものか」

 電子合成の声でありながら、威圧的な声色を持つスゴーミンの声……だが、外套の男はまるでその言葉が耳に届いていないかのように背を向けたまま遭難者の介抱を続ける。

「先ほど上空から、この砂丘の向こうに降り立った船を確認している。あの帆船(ガレオン)型宇宙航行船、あのタイプはファミーユ星で造船されているものだ」

 貴様はファミーユ星の人間かと問うスゴーミンに、外套の男はなおも無反応を答えとした。それは同時に、ザンギャックに対する反抗の姿勢とも取れる。

「ザンギャックの惑星渡航許可証を見せて貰おう。もし無ければ、今ここで反逆者として――」

「この宇宙を渡るのに」

 スゴーミンの言葉を遮って、外套の男がようやく口を開いた。静かに立ち上がった男は振り返り、自身を取り囲むように立つゴーミン達に向けて――
 
「お前達の許可を求める必要がどこにある」

 ――静かな怒気を込めて言い放った。
 これに驚いたのは、ゴーミン達よりもそれを遠巻きに見物していた銀色の男達だった。まったくの予想外。いや、むしろ馬鹿と言った方がいい。今やこの銀河系だけでなく、他星系の多くを掌握しつつあるザンギャックに盾突こうなどとは、並の酔狂さではない。もはや外套の男の運命は決まったも同然。あの遭難者と同じくこの砂の大地に転がされて、太陽に焼かれて死んでいくのだ。
 そして、予想外の言葉が飛んできたのは、スゴーミン達にとっても同じであった。

「ほう、随分な態度だな。我々を宇宙帝国ザンギャック……この宇宙を支配する、無敵のザンギャックだと知っていての事だろうな」

「無敵だと?」

「そうだ。我々の侵略艦隊の通った後には、我らの領土と星の屑しか残らん。弱き者、力なき者は、巨大な力の前に平伏してゆく。我らは無敵だ」

 その言葉は、自身を絶対の強者と信じている者の驕りに満ちていた。だが、それを咎める事が出来ないのもまた事実だった。宇宙帝国ザンギャックの侵略は次々とその手を広めている。今、この宇宙の支配者はザンギャックと言っても過言ではないのだ。
 なのに。

「フフフ……」

 だというのに。

「フハハハハ」

 外套の男は笑い声を上げた。さもその事実が滑稽な事であるかのように、不敵に笑って見せたのだ。

「貴様、何がおかしい!」

 スゴーミンの態度も一変する。怒りを露わにし、この不遜な態度の反逆者にその武器となる鋭い腕を突きつける。左右を固めるゴーミンも、その手の棍棒型の武器を外套の男へと向けた。
 対して、微動だにしないまま外套の男は続けた。

「辺境の銀河系の星……"地球"の『スーパー戦隊』に敗北を喫したお前達が、無敵とはおかしな事を言う」

「何故それを……!」

 思わず息を呑んだ。それはつい半年ほど前の事……辺境銀河へと侵攻中だったザンギャックの侵略艦隊が、とある星で苛烈な抵抗にあい、全滅させられたという情報が帝国内を駆け巡ったのだ。今まで一度足りとも敗北を許さなかったザンギャックの侵略を退けたという『スーパー戦隊』。彼らの存在は、帝国の権威のために領土内では隠匿されていたというのに……。
 目の前の男は、何故その存在を知っているのか。

「貴様、何者だ!」

 怒りと焦りに駆られたスゴーミンの右腕が目の前の男めがけて突き出される。鋭い爪を備えた腕が、男の胸の辺りの外套を切り裂くと、そこから赤い肌が覗いた。

「やれ、ゴーミン!」
「ゴッ!」
「ゴッ!」

 スゴーミンの指示が飛び、左右からゴーミンが飛び掛る。同時に振るわれた棍棒は男の頭部目掛けて振り下ろされ――そのどちらもが、"赤く光る光の刃"に受け止められた。

「ゴッ!?」

 ゴーミン達が驚きの声を上げて固まる。外套の男が一瞬のうちに抜き放った右腕に握られた両刃の剣。その刀身が放つ眩き光のプリズムを目の当たりにしたスゴーミンは、己のデータベースに合致するものを見つけた。

「そのプリズムの光……フラッシュ星系の!?」

 剣から放たれる光……それは、いまだザンギャックが完全支配下に置くことの出来ないでいるフラッシュ星系で生み出されたプリズムの光だった。確か名を――『プリズム聖剣』。

「では、あの"改造実験帝国メス"を滅ぼした……!」

 その名を口にしようとした瞬間、外套の男はプリズム聖剣を振り上げた。ゴーミン二体がバランスを崩して隙を見せる。瞬間、砂の大地を蹴った男は一体のゴーミンの脇腹にプリズム聖剣の刃を食い込ませた。それは斬るというよりは、折るという表現が正しいかもしれない。恐るべき速度で叩きつけられた刃はゴーミンの強固な骨格フレームを一撃で粉砕し、その運動性能を一瞬にして奪い去った。
 そのまま剣を振り抜き、残るもう一体へと刃を叩きつけんとする。しかし、機械が故の卓越した反応速度でスゴーミンは反応して見せた。男の頭部目掛けてその腕を振るう。

「自在剣!」

 外套の男が叫んだ。瞬間、プリズム聖剣は赤き光を放って、"別の武器にその姿を変えた"。
 二本の短剣となったそれを、ゴーミンとドゴーミンそれぞれに振るい払う。ズバッと鋭い斬撃音が熱風の中を走り抜け、二体目のゴーミンが胸から火花を噴いた。スゴーミンへと向けられた一本は、鋭く巨大な腕とかち合って、それを食い止めている。

「違う……!? 貴様、フラッシュマンでは!」

 ドゴーミンは、プリズムの光を宿す超新星の戦士の名を口にする。だが、今外套の男が握る武器は彼らのものではなかった。
『自在剣・機刃(キバ)』。それは、銀河を守るために存在すると伝えられる星獣と"アース"の力を持った戦士達の武器。

「何者だあ!」

 ドゴーミンが吼えた。外套の男は、それに対して"銃撃"で答えた。
 自在剣・機刃が光を放ち、"二兆拳銃"へと姿を変える。

「ディーマグナム!」

 男が叫ぶ。二兆拳銃から放たれたビームの弾丸はドゴーミンのボディに炸裂、至近距離から一秒間に二十発の連射速度で叩き込まれた銃撃を受けて、ドゴーミンの体が砂の上を弾け飛ぶ。
 だが、それで終わりではない。
 再度、特捜戦隊の装備『ディーマグナム』が赤い閃光を発して変化した。今度は鞭状の武器へと姿を変えたそれを、男はドゴーミンへと投げつける。

「レッドビュート!」

 男と弾け飛んだドゴーミンとの間の空間を一瞬にして走り抜けた白い鞭『レッドビュート』は、ドゴーミンの体を捕縛する。そのまま一気に引っ張り戻すと、ドゴーミンの体が独楽のように回転しながらこちらへと吹き飛んできた。
 引き戻されたレッドビュートが光を放つ。光は男の右腕にまとわりつき、向かってくるドゴーミンに向けて――

「デンジ、パンチッ!」

 ――デンジα鋼製のナックルアタッチメントによる右ストレートを叩き込む!
 バキィと鋼鉄が砕ける音が響き渡ったと同時に、細かな電子部品のひしゃげる音、砂の上にバラバラと部品が勢い良く撒かれ、破裂したオイルが辺りの砂を黒く染める。拳の一閃が巻き起こした旋風が、男の纏っていた外套を引き剥がして空へと連れ去っていった。
 バヂッと紫電が走る。どてっ腹を砕かれたドゴーミンは外套の男にもたれかかるようにして倒れる。壊れた電子頭脳が「キサマハ……キサマハ……」と合成音を繰り返していたが、既にボディの動きを司る機能は生きてはいない。

 ――それらは、一瞬の出来事だった。
 外套の男が剣を抜き放ってから決着までは僅かに十数秒。離れた場所で観戦を決め込んでいた銀色の男達も、何が起こったのか理解できないまま唖然とした表情を浮かべていた。その一部始終を上空から観察していたのであろうザンギャックの飛行艇は、追加戦力を送り出してくることもなくその場から離脱して行った。大した戦力を乗せていなかったのだろう、不幸中の幸いではあった。

「しかし……やはりここでもザンギャックと戦う事になったか」

 出来ればこの星での用は気取られず進めたかったのだが、とひとりごちた男は、"その赤い体"を灼熱の光を放つ太陽の下に晒して、天を仰いだ。

 その左胸に「34」のエンブレムを持った赤い男――。

 彼の名は――。 





       海賊戦隊ゴーカイジャー外伝

            『紅の標』



序/了
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