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駄文置場という名の虚無空間です

 

よし、虚無ろう

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Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅵ 

1章/Ⅵ:オイズの酒場

 商店の並ぶ通りを道なりにゆくと、突き当たりのT字路の正面に二階建ての酒場が建っていた。外観は他の民家と変わらぬ灰色の壁造りだが、外には酒樽と思しきものが並び、酒場を示す木製の看板が垂れ下がっている。クエンという男の言っていたのはここの事だろう。

 入口をくぐるとカランカランと客の入店を知らせる銅の鐘が鳴った。店内は照明が絞られて薄暗く、カウンターと丸テーブルが並べられた質素なもので、カウンター席に一人飲みの人影、テーブル席に陽の高いうちから酒盛りをする幾人かの老人がいる程度の閑散したものだった。

「いらっしゃいませ……」

 ウエイトレスと思しき妙齢の女性がカウンター越しにこちらを見て言った。
 女性はこの星の人間らしく銀色の肌をしていたが、眼には覇気がなく、その声は商売人としての活気がまったく感じられないものだった。顔が窺い知れない程に深々と外套を被った男の来店を怪しんでいる風でもある。だが、その背に負われた男の顔を認めた瞬間、彼女は驚きとともにその眼を見開いた。

「あ、あなた……!?」

 そう口走るや否や、彼女は信じられないものを見る表情で駆け寄ってきた。アカレッドの背でぐったりとしている男に「あなた!ねえ、あなた!」としきりに声を掛ける。この女性がこの男の妻と判断するのはそれだけで充分で、アカレッドは男の体を一番近いテーブル席へと降ろした。

「砂漠で倒れていたんだ。水は飲ませた、意識が戻るのもすぐだろう」

「あ、あ……あ……なんてこと……」

 夫の頬にこびり付いた砂を払いながら、彼女はその顔をまじまじと見つめて呟いた。

「もう会えないと諦めていました……ありがとうございます……ありがとうございます……」

 しきりに礼を口走る彼女の目尻にはうっすらと涙の痕がある。先ほども泣いていたのだろう、その理由に察しがつかないアカレッドではなかった。

「お父さん? お父さん!」

 店の奥から少年の声がした。一目散に駆け寄ってきた少年は椅子でぐったりとうな垂れる男にすがり付いてその名を呼んでいる。銀色の肌に地球人に似た光を宿す瞳……この夫婦の息子なのだろう。

 二人はまるで再会出来た事を奇跡であるかのように喜んでいた。その様子に、クエンの言っていた事を思い出す。この男はザンギャックに連行された、と……。

「再会を喜んでいるところ済まない。良ければ聞かせてくれないか、彼に何があったのかを」

 アカレッドは男の妻に尋ねる。彼の身に何が起こったのか。この家族が引き裂かれてしまう理由とは何だったのか。
 息子の肩を抱きながら夫の帰りを涙ながらに喜んでいた男の妻は、ようやく落ち着きを取り戻した様子で「命の恩人を前に失礼しました」と頭を下げて事の経緯を教えてくれた。


 ……聞いてみれば複雑な話などではなかった。惑星エイトに駐留しているザンギャックの連中がこの店にやって来て、客や店、息子たちに乱暴を働いたのだという。最初のうちは我慢していた夫もついには彼らに対して抗議を行った。すると連中はその場で夫を痛めつけるだけ痛めつけると、反逆者として連行、砂丘へと追放してしまったのだ。


「夫は、"食料や水はいくらでも提供するから、他の人々や息子に乱暴はしないで下さい"と頼んだだけなんです……それなのに、あんなひどい事を……」

 妻の脳裏には、夫が痛めつけられた時の様子が思い返されているのだろう、苦い記憶に眉を顰めて語った。
 話を聞き終えたアカレッドは胸中穏やかではなかった。いや、言葉にこそしなかったが、その拳は怒りを湛えて固く、固く握られていた。

「あの連中は何処へ行ってもやりたい放題じゃて。店ごと潰されんかったのは運が良かったと思わねばいかん」

 そう言って唐突に話題を振ってきたのは、店内で昼間から酒を呷っていた老人達のひとりだった。皺の刻まれた頬を卑屈に歪めながら、手に持ったコップの残りを一気に飲み干すと「奴らの領土では奴らが法だ。反抗すれば死期を早めるだけじゃ」と乾いた笑いを浮かべる。その表情は、彼に同席していた数人の老人もまた同様だった。

「少し前もどこぞの星がザンギャックに侵攻されて滅びたらしいしのう」

「抵抗するものもいない、女子供が身を寄せて生きているような星だろうとお構いなしにな」

 彼らが口にする出来事はアカレッドにとってまさに目の当たりにしてきた出来事であった。旅を続ける中でそんな星々を幾つも見てきた。そしてそれは過去の事ではない。今もなお、そういう星が増え続けているのだ。

「ザンギャックの住み着いた星にはガラの悪い連中もいっぱい流れて来おるからの。争いごとなど日々絶えんわい」

 老人が言いながら視線をアカレッドの背後、店の入口付近の壁に注ぐ。そこには手配書が数枚貼り付けられていた。ザンギャックによって手配されたのであろう犯罪者達の顔が連なっている中に、まだ若い女の姿もある。

「星を失い、宇宙を流浪(なが)れ、犯罪者に身を落とすのは、女子供でも変わりないのう」

 "ルカ・ミルフィ"と表記された賞金首の女もまた、そういった人間のひとりなのだろうか……。

「おまけにそいつらを狙った賞金稼ぎなんて連中までやって来た日にゃ、わしらはおちおち酒も飲めん日々じゃよ」

 言葉とは裏腹に老人達はガブガブとコップの中身を減らしていく。

「最近はこの辺りで赤いなりをして滅法強いのが暴れまわっとるそうじゃ」

「赤い賞金稼ぎっちゅうと、ほれ、あのキアイドーとか言うのがおっそろしいっちゅう話だで。百人は斬っとるっちゅう」

「この星に来とるんかいのう……」

「はた迷惑は話だわい」

 アカレッドたちに絡むのを止め、老人達の会話が自分達の輪へと戻った矢先、店の入口をくぐる人影が三つ。

「邪魔をするぞ」

 不遜な態度で入店を果たしたのは、三体のゴーミンだった。「い、いらっしゃいませ」とそっと夫を庇う位置に立って彼らを迎えた男の妻を尻目に、店内の様子を見渡しながら先頭のゴーミンが言った。

「この街に反逆者が紛れ込んだ疑いがある」

 途端、先ほどまで口々に喋っていた老人達は視線を落として黙り込んだ。

「薄汚れた外套に身を包んでおり、その下の体は真っ赤だったそうだ。我らがザンギャックの兵を三体も破壊した重罪人だ」

 言いながらゴーミンの視線は既にアカレッドを捉えていた。砂を被った外套は薄汚れており、一つ目の条件に見合っている。ずかずかと近寄ってきたゴーミンはアカレッドの右腕を掴み上げるとそのまま腕の外套をまくった。そこから除く手は真紅の色をしていて、二つ目の条件に見合っていた。

「お前か?」

 今すぐその手を振り払って、ゴーミンに拳を叩きつけてやりたかった。しかしそれを思いとどまったのは、視界の端に、状況を恐々とした表情で見つめる母子達を見止めたからだ。この親子を巻き込む訳にはいかない。

「……私は人を探しているだけだ」

「誰を探している?」

「技術者だ。ザイークという」

「ザイーク……?」

 その名を反芻したゴーミンは何がおかしいのか、ケタケタと笑い始めた。

「貴様、墓穴を掘ったな。ザイークはザンギャックに歯向かってこの地を追われた男だ。そいつを訪ねて来たのならば、貴様もザンギャックへの反乱分子と見なされる。連行しろ!」

 そんな理屈があるものか、と異を唱える間も与えず、ゴーミン達はアカレッドを連行せんとする。そんな奴らの横暴も、咎められる者がその場にいるはずもなく――

「待ちなよ」

 ――声がした。それは店の奥から。見れば、先ほどからカウンター席に腰を落ち着けていた人影が立ち上がり、こちらへ歩み寄ってきていた。男の声だったが、姿格好はアカレッドと同様に汚れた外套で身を包んでおり、顔が窺い知れない。男はアカレッドを掴んでいたゴーミンの腕を力任せに引き剥がすと、そのまま奴らを突き飛ばした。

「お尋ね者の知り合いがお尋ね者になるのなら、ゴミの知り合いはみんなゴミなのかい?」

 あからさまに挑発的な態度で男はゴーミン達を煽る。この星にそんな命知らずなことをする者がまだいたことは、アカレッドにとっても驚きだった。

「貴様ァ……その態度、反逆者と判断するには充分だ!」

「反逆者とは聞こえが悪いな。俺は元から、お前らに靡いた覚えは無いね」

「お、のれェェ!」

 男の挑発に業を煮やしたゴーミン達が飛び掛る。瞬間、男は真正面から突っ込んできたゴーミンの腹に向けて蹴りを叩き込んだ。まるで横向きの重力に引っ張られるように背後へと吹き飛んだゴーミンは、仲間のゴーミン二体を巻き込んで店の入口から店外へと転がり出て行った。外で悲鳴が上がる。突如酒場からゴーミンが転げ出て来たのだ。通行人たちが驚いたのだろう。
 男は蹴りの勢いで捲れ上がっていた外套をふわりと元に戻すと「ここは俺に任せて」とアカレッドに告げて店外へと飛び出して行った。

「何者だ……?」

 男の正体に心当たりはなかった。そもそも初めて訪れたこの星でアカレッドを知る者もいないだろう。では彼は一体……。

「こっちです……!」

 途端、腕を引っ張られた。今度はゴーミンの厳つい手ではなく、女性の手だった。店主の妻がアカレッドを店の裏口から逃がそうとしてくれていた。先ほどの人物が何者かは分からないが、せっかくの助けを無駄にする訳にもいかない。ここは彼女の案内で退却するのが得策だろう。

 店の裏口のドアをくぐると、建物と建物の間に伸びる細い路地に出た。見上げれば両脇に土の壁が聳え、細長く切り取られた空が見える。

「こちらへ……!」

 店主の妻が路地の中を走り、アカレッドも彼女を追って走った。こういう時、土地勘のある者の案内は大いに助かるのだが、彼女は何処へ導いてくれようとしているのか。

「先ほど、ザイークという方を探していると仰ってましたね?」

 走りながら彼女が言った。

「知っているのか?」

「ご案内します」

「しかし、奴らの話ではザイークはこの地を追われたと……」

「表向きは、です。ザンギャックは知りません。あの方がまだこの街に居るのを」

 細い路地をまるで迷路のように縫って走り、ようやく彼女は止まった。そこは袋小路になっていて、何処から集められたのかガラクタが無造作に山積みになっていた。
 彼女は肩で息をしながら、そのガラクタの山を掘り返す。幾つかの物をどかすと、その下にポッカリとガラクタに囲まれて出来た階段のようなものが姿を現した。

「これは……」

「この奥です」

 路地裏の奥の奥、ガラクタで隠された地下通路、こんなところにザイークがいるのだろうか。
 ……いや、いるのだろう。彼女は危険を省みずここへと案内してくれたのだ。アカレッドはガラクタを踏み越えて地下通路を一歩、二歩と降りた。途中、入口をガラクタで隠そうとする店主の妻を振り返り、「すまない、感謝する」と礼を述べた。

「もう帰ってこないと思っていた夫の事を救って下さったせめてもの恩返しです……どうか、お気になさらないで」

 そう言って彼女は少し困ったように笑い、入口を静かに閉ざした。


 ――この星には、彼女達のような家族が住んでいる。今まで渡り歩いて来た星々でもそうだった。ザンギャックの支配の下に、いつも一握りの善良な人々のささやかな平和が乱されていた。こんな事がいつまでも続いて良いはずがないのだ。

 その支配を打ち破る力が必要なのだ。
 宇宙の多くを掌握する強大な宇宙帝国ザンギャックに反旗を翻し、その支配を打ち破る力が。

 だから、アカレッドはここに来た。


 階段を降りる。狭く、薄暗い通路にはポツンポツンと火が燈されたランプが置かれており、その奥で鉄の扉がアカレッドを出迎えた。
 扉には『ザイーク工房』と彫られた手作りの古ぼけた看板がかかっていた……。


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