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駄文置場という名の虚無空間です

 

よし、虚無ろう

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Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅵ 

1章/Ⅵ:オイズの酒場

 商店の並ぶ通りを道なりにゆくと、突き当たりのT字路の正面に二階建ての酒場が建っていた。外観は他の民家と変わらぬ灰色の壁造りだが、外には酒樽と思しきものが並び、酒場を示す木製の看板が垂れ下がっている。クエンという男の言っていたのはここの事だろう。

 入口をくぐるとカランカランと客の入店を知らせる銅の鐘が鳴った。店内は照明が絞られて薄暗く、カウンターと丸テーブルが並べられた質素なもので、カウンター席に一人飲みの人影、テーブル席に陽の高いうちから酒盛りをする幾人かの老人がいる程度の閑散したものだった。

「いらっしゃいませ……」

 ウエイトレスと思しき妙齢の女性がカウンター越しにこちらを見て言った。
 女性はこの星の人間らしく銀色の肌をしていたが、眼には覇気がなく、その声は商売人としての活気がまったく感じられないものだった。顔が窺い知れない程に深々と外套を被った男の来店を怪しんでいる風でもある。だが、その背に負われた男の顔を認めた瞬間、彼女は驚きとともにその眼を見開いた。

「あ、あなた……!?」

 そう口走るや否や、彼女は信じられないものを見る表情で駆け寄ってきた。アカレッドの背でぐったりとしている男に「あなた!ねえ、あなた!」としきりに声を掛ける。この女性がこの男の妻と判断するのはそれだけで充分で、アカレッドは男の体を一番近いテーブル席へと降ろした。

「砂漠で倒れていたんだ。水は飲ませた、意識が戻るのもすぐだろう」

「あ、あ……あ……なんてこと……」

 夫の頬にこびり付いた砂を払いながら、彼女はその顔をまじまじと見つめて呟いた。

「もう会えないと諦めていました……ありがとうございます……ありがとうございます……」

 しきりに礼を口走る彼女の目尻にはうっすらと涙の痕がある。先ほども泣いていたのだろう、その理由に察しがつかないアカレッドではなかった。

「お父さん? お父さん!」

 店の奥から少年の声がした。一目散に駆け寄ってきた少年は椅子でぐったりとうな垂れる男にすがり付いてその名を呼んでいる。銀色の肌に地球人に似た光を宿す瞳……この夫婦の息子なのだろう。

 二人はまるで再会出来た事を奇跡であるかのように喜んでいた。その様子に、クエンの言っていた事を思い出す。この男はザンギャックに連行された、と……。

「再会を喜んでいるところ済まない。良ければ聞かせてくれないか、彼に何があったのかを」

 アカレッドは男の妻に尋ねる。彼の身に何が起こったのか。この家族が引き裂かれてしまう理由とは何だったのか。
 息子の肩を抱きながら夫の帰りを涙ながらに喜んでいた男の妻は、ようやく落ち着きを取り戻した様子で「命の恩人を前に失礼しました」と頭を下げて事の経緯を教えてくれた。


 ……聞いてみれば複雑な話などではなかった。惑星エイトに駐留しているザンギャックの連中がこの店にやって来て、客や店、息子たちに乱暴を働いたのだという。最初のうちは我慢していた夫もついには彼らに対して抗議を行った。すると連中はその場で夫を痛めつけるだけ痛めつけると、反逆者として連行、砂丘へと追放してしまったのだ。


「夫は、"食料や水はいくらでも提供するから、他の人々や息子に乱暴はしないで下さい"と頼んだだけなんです……それなのに、あんなひどい事を……」

 妻の脳裏には、夫が痛めつけられた時の様子が思い返されているのだろう、苦い記憶に眉を顰めて語った。
 話を聞き終えたアカレッドは胸中穏やかではなかった。いや、言葉にこそしなかったが、その拳は怒りを湛えて固く、固く握られていた。

「あの連中は何処へ行ってもやりたい放題じゃて。店ごと潰されんかったのは運が良かったと思わねばいかん」

 そう言って唐突に話題を振ってきたのは、店内で昼間から酒を呷っていた老人達のひとりだった。皺の刻まれた頬を卑屈に歪めながら、手に持ったコップの残りを一気に飲み干すと「奴らの領土では奴らが法だ。反抗すれば死期を早めるだけじゃ」と乾いた笑いを浮かべる。その表情は、彼に同席していた数人の老人もまた同様だった。

「少し前もどこぞの星がザンギャックに侵攻されて滅びたらしいしのう」

「抵抗するものもいない、女子供が身を寄せて生きているような星だろうとお構いなしにな」

 彼らが口にする出来事はアカレッドにとってまさに目の当たりにしてきた出来事であった。旅を続ける中でそんな星々を幾つも見てきた。そしてそれは過去の事ではない。今もなお、そういう星が増え続けているのだ。

「ザンギャックの住み着いた星にはガラの悪い連中もいっぱい流れて来おるからの。争いごとなど日々絶えんわい」

 老人が言いながら視線をアカレッドの背後、店の入口付近の壁に注ぐ。そこには手配書が数枚貼り付けられていた。ザンギャックによって手配されたのであろう犯罪者達の顔が連なっている中に、まだ若い女の姿もある。

「星を失い、宇宙を流浪(なが)れ、犯罪者に身を落とすのは、女子供でも変わりないのう」

 "ルカ・ミルフィ"と表記された賞金首の女もまた、そういった人間のひとりなのだろうか……。

「おまけにそいつらを狙った賞金稼ぎなんて連中までやって来た日にゃ、わしらはおちおち酒も飲めん日々じゃよ」

 言葉とは裏腹に老人達はガブガブとコップの中身を減らしていく。

「最近はこの辺りで赤いなりをして滅法強いのが暴れまわっとるそうじゃ」

「赤い賞金稼ぎっちゅうと、ほれ、あのキアイドーとか言うのがおっそろしいっちゅう話だで。百人は斬っとるっちゅう」

「この星に来とるんかいのう……」

「はた迷惑は話だわい」

 アカレッドたちに絡むのを止め、老人達の会話が自分達の輪へと戻った矢先、店の入口をくぐる人影が三つ。

「邪魔をするぞ」

 不遜な態度で入店を果たしたのは、三体のゴーミンだった。「い、いらっしゃいませ」とそっと夫を庇う位置に立って彼らを迎えた男の妻を尻目に、店内の様子を見渡しながら先頭のゴーミンが言った。

「この街に反逆者が紛れ込んだ疑いがある」

 途端、先ほどまで口々に喋っていた老人達は視線を落として黙り込んだ。

「薄汚れた外套に身を包んでおり、その下の体は真っ赤だったそうだ。我らがザンギャックの兵を三体も破壊した重罪人だ」

 言いながらゴーミンの視線は既にアカレッドを捉えていた。砂を被った外套は薄汚れており、一つ目の条件に見合っている。ずかずかと近寄ってきたゴーミンはアカレッドの右腕を掴み上げるとそのまま腕の外套をまくった。そこから除く手は真紅の色をしていて、二つ目の条件に見合っていた。

「お前か?」

 今すぐその手を振り払って、ゴーミンに拳を叩きつけてやりたかった。しかしそれを思いとどまったのは、視界の端に、状況を恐々とした表情で見つめる母子達を見止めたからだ。この親子を巻き込む訳にはいかない。

「……私は人を探しているだけだ」

「誰を探している?」

「技術者だ。ザイークという」

「ザイーク……?」

 その名を反芻したゴーミンは何がおかしいのか、ケタケタと笑い始めた。

「貴様、墓穴を掘ったな。ザイークはザンギャックに歯向かってこの地を追われた男だ。そいつを訪ねて来たのならば、貴様もザンギャックへの反乱分子と見なされる。連行しろ!」

 そんな理屈があるものか、と異を唱える間も与えず、ゴーミン達はアカレッドを連行せんとする。そんな奴らの横暴も、咎められる者がその場にいるはずもなく――

「待ちなよ」

 ――声がした。それは店の奥から。見れば、先ほどからカウンター席に腰を落ち着けていた人影が立ち上がり、こちらへ歩み寄ってきていた。男の声だったが、姿格好はアカレッドと同様に汚れた外套で身を包んでおり、顔が窺い知れない。男はアカレッドを掴んでいたゴーミンの腕を力任せに引き剥がすと、そのまま奴らを突き飛ばした。

「お尋ね者の知り合いがお尋ね者になるのなら、ゴミの知り合いはみんなゴミなのかい?」

 あからさまに挑発的な態度で男はゴーミン達を煽る。この星にそんな命知らずなことをする者がまだいたことは、アカレッドにとっても驚きだった。

「貴様ァ……その態度、反逆者と判断するには充分だ!」

「反逆者とは聞こえが悪いな。俺は元から、お前らに靡いた覚えは無いね」

「お、のれェェ!」

 男の挑発に業を煮やしたゴーミン達が飛び掛る。瞬間、男は真正面から突っ込んできたゴーミンの腹に向けて蹴りを叩き込んだ。まるで横向きの重力に引っ張られるように背後へと吹き飛んだゴーミンは、仲間のゴーミン二体を巻き込んで店の入口から店外へと転がり出て行った。外で悲鳴が上がる。突如酒場からゴーミンが転げ出て来たのだ。通行人たちが驚いたのだろう。
 男は蹴りの勢いで捲れ上がっていた外套をふわりと元に戻すと「ここは俺に任せて」とアカレッドに告げて店外へと飛び出して行った。

「何者だ……?」

 男の正体に心当たりはなかった。そもそも初めて訪れたこの星でアカレッドを知る者もいないだろう。では彼は一体……。

「こっちです……!」

 途端、腕を引っ張られた。今度はゴーミンの厳つい手ではなく、女性の手だった。店主の妻がアカレッドを店の裏口から逃がそうとしてくれていた。先ほどの人物が何者かは分からないが、せっかくの助けを無駄にする訳にもいかない。ここは彼女の案内で退却するのが得策だろう。

 店の裏口のドアをくぐると、建物と建物の間に伸びる細い路地に出た。見上げれば両脇に土の壁が聳え、細長く切り取られた空が見える。

「こちらへ……!」

 店主の妻が路地の中を走り、アカレッドも彼女を追って走った。こういう時、土地勘のある者の案内は大いに助かるのだが、彼女は何処へ導いてくれようとしているのか。

「先ほど、ザイークという方を探していると仰ってましたね?」

 走りながら彼女が言った。

「知っているのか?」

「ご案内します」

「しかし、奴らの話ではザイークはこの地を追われたと……」

「表向きは、です。ザンギャックは知りません。あの方がまだこの街に居るのを」

 細い路地をまるで迷路のように縫って走り、ようやく彼女は止まった。そこは袋小路になっていて、何処から集められたのかガラクタが無造作に山積みになっていた。
 彼女は肩で息をしながら、そのガラクタの山を掘り返す。幾つかの物をどかすと、その下にポッカリとガラクタに囲まれて出来た階段のようなものが姿を現した。

「これは……」

「この奥です」

 路地裏の奥の奥、ガラクタで隠された地下通路、こんなところにザイークがいるのだろうか。
 ……いや、いるのだろう。彼女は危険を省みずここへと案内してくれたのだ。アカレッドはガラクタを踏み越えて地下通路を一歩、二歩と降りた。途中、入口をガラクタで隠そうとする店主の妻を振り返り、「すまない、感謝する」と礼を述べた。

「もう帰ってこないと思っていた夫の事を救って下さったせめてもの恩返しです……どうか、お気になさらないで」

 そう言って彼女は少し困ったように笑い、入口を静かに閉ざした。


 ――この星には、彼女達のような家族が住んでいる。今まで渡り歩いて来た星々でもそうだった。ザンギャックの支配の下に、いつも一握りの善良な人々のささやかな平和が乱されていた。こんな事がいつまでも続いて良いはずがないのだ。

 その支配を打ち破る力が必要なのだ。
 宇宙の多くを掌握する強大な宇宙帝国ザンギャックに反旗を翻し、その支配を打ち破る力が。

 だから、アカレッドはここに来た。


 階段を降りる。狭く、薄暗い通路にはポツンポツンと火が燈されたランプが置かれており、その奥で鉄の扉がアカレッドを出迎えた。
 扉には『ザイーク工房』と彫られた手作りの古ぼけた看板がかかっていた……。


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Posted on 23:54:04 «edit»

Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅴ 

1章/Ⅴ:オイズの街


「やはりあのキーはお宝だぜ」

 遠巻きにアカレッドとクエンのやりとりの一部始終を見ていたロブは、俺の眼に狂いは無かったと不敵な笑みを浮かべていた。その背に隠れるようにしてハテッサも同じく様子を伺っている。

「で、でもよお、関わらないしようって言ったじゃん……!」
 
 背後で弱気な声をあげるハテッサだったが、今のロブは聞く耳を持っていなかった。

「いいかハテッサ、俺たちの仕事はなんだ」

「え……えっと、拾ってきたガラクタを売り捌いてその日その日をなんとか食い繋ぐ仕事?」

「若干納得いかねえ言い回しだがその通りだ」

 この星の頭上にある"二重恒星太陽"……その片方は異空間と繋がったホワイトホールだ。そのホワイトホールから吐き出された物が度々惑星エイトの地表へと降って来る。それを拾って来ては売り捌くのが二人が生業とすることだった。

「今日はガラクタの代わりにとんでもねえヤツを拾っちまったと思っていたが、こりゃとんだ拾いものだったのかもしれねえ。あの"レンジャーキー"とやら、使い方次第じゃすげえ金の成る木になるぜ」

 言って笑うロブの顔はお宝への好奇心と欲で満ち溢れており、あの男と関わらない方が良いという発想は何処かへ失せてしまっている様子だった。

「けどなあ……」

「なんだよ、煮え切らねえな。お前が嫌だつっても俺はアイツを追うぜ。ここでコンビ解散だ」

「わ、分かった、分かったよ!俺も行くって!」

 ロブの勢いに逆らえず、ハテッサは流されるままにアカレッドを追う事になってしまった。

「クエンの親父もあの鍵の価値に気付いたかもしれえからな。急ぐぞ」

 ガラクタ売りのライバルであるクエンの鑑定眼もバカには出来ない。ロブは再び人波に紛れながらアカレッドを追い始め、ハテッサは再度深い溜息とともにロブを追って通りを歩き始めた。

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Posted on 23:51:40 «edit»

Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅳ 

1章/Ⅳ:オイズの街


 アカレッドが街に入ると、先ほどの砂漠とは打って変わった活気溢れる光景が飛び込んできた。
 石造りらしき家々の合間にテント張りの商店が立ち並び、往来を人波が流れている。先ほどのハテッサ達と同じような銀色の肌をした人々から、半獣半人のような者達もいれば、機械の体をした小さな子供まで多種多様な人々がそこにいる。

 彼らの姿形を除けば、地球で言うエジプト辺りの田舎街の風景に似た雰囲気だろうか。客を呼び込む声と人々の談笑がところどころで聞こえ、傍目には平和な街の姿そのものであった。
 そんな人波を避けるようにして歩くアカレッドではあったが、やはり目深に外套を被り、背にグッタリとした男を背負った格好は人々にも異様に映るらしく、背後からひそひそと訝しげな声色の話声と視線を感じて歩まねばならなかった。

「よお!そこの変なもん背負ってる兄さん!こっち見ていかねえか!」

 そんな雰囲気をまったく意に介さないような声がアカレッドを呼び止めた。商店の親父だった。小太り体型で丸みを帯びた銀色の顔をニヤリと歪ませた親父は自分の店先を指差して手招きをしている。

「私か」

「変なもん背負ってるのはあんたしかいねえだろ兄さん!」

 ガッハッハッハ!と下品な笑い声をあげた親父は商人らしいテンションの高さで一気にアカレッドの注目を惹きつけると、そのまま勢い任せに店先へと連れ込んだ。

「いいから見ていきなって!俺ぁクエンっていうここらじゃ有名な商人よ!うちは親切・信頼・安心で売ってるんだ、ここに揃えた品々も俺自身が出向いて見繕ってきたモンばっかりだぜ」

 クエンと名乗った男の店先には大小様々なものが陳列されていた。小さな花瓶のようなものから何かのエンジンらしきパーツまで、無差別、無軌道、無秩序に掻き集め、積み上げられたそれらは一言で言ってしまえばガラクタの山のようにしか見えない。これは何屋なのだろう。
 クエンはガラクタの山を崩して中から赤錆の浮いた長い棒を取り出してアカレッドに見せた。
 
「この剣なんてどうだい。物騒な世の中だ、護身用に一本持ってても損は無いぜ」

 思わず"剣だったのか"と言いたくなるほどに錆びたそれで何を護れと言うのか。野菜だって斬れそうもない。大体武器なら間に合っている。

「ならこのレーザーガンはどうだ。こいつならでっけえ岩のひとつやふたつ一発で粉微塵だ」

 小銃サイズのレーザーガン、エネルギーゲージはゼロを指している。この店にそのエネルギーパックが売ってる様子もなかった。これでは意味がない。

「分かった!武器が好みじゃないならこっちの非常食なんてどうだ!異星で仕入れたもんだがうまそうだぜ!」

 味の保障は無いらしい。取り出されたのは地球のカップラーメンに良く似た容器で、フタには"陽気なアコちゃん"と書かれている。

「……生憎だが、私は持ち合わせがないのでな」

 事実、この星でも使われている通貨『ザギン』を持ち合わせていないアカレッドにそれらを買う手段は無かったのだが、これを逃れるための方便と取ったクエンは逃がすまいと食い下がってきた。

「よし!じゃあとっておき!とっておきのを見せるよ兄さん!」

 高いテンションを維持したままのクエンは店の奥へと引っ込むと、大きな鉄の塊を引っ張り出してきた。バイクだ。随分と埃を被っているが、地球で使われているそれと良く似ていた。

「これだ!どうだい、すげえもんだろ!うちの店の自慢の一品でね、まだ誰にも売った事がないんだ!」

 それはただの不良在庫ではないのか。

「こいつはただのマシンじゃない!あの"宇宙暴走族ボーゾック"が悪ぶってた頃に花火にしちまった"ハザード星"で作られたモンだ。今じゃ貴重だぜえ?」

 クエンはどうだと口の端を吊り上げて不敵に笑ったが、今までの商品の事もある。まともな品とは思えない。

「ハザード星で作られたものならその動力源は"クルマジックパワー"か……動くのか?」

「え」

 え、ではない。そこに触れるつもりは無かった様子のクエンの顔でこれが売れ残っている理由も分かった。

「動かないのか」

「で……でもよ!こいつはすげえ骨董品だろ!?そこにあるだけで価値があるってえもんよ!コレクター魂を刺激するだろ!?」

「本物ならばな」

「うぐ……」

 苦い顔をしたクエンは押し黙ってしまった。これでは自身で出向いて見繕ったという話も怪しいものだ。

「ふむ……」

 何やら一考したアカレッドは、男を背負ったままの格好でバイクへと近づくと何かを取り出した。それは赤い"レンジャーキー"。激走戦隊カーレンジャーのレッドレーサーを模したキーだった。カシャッとそれを鍵状へと変形させると、バイクの鍵穴に差し込んでみた。

 途端、"レンジャーキー"から鈍い光が溢れ出した。光はキーからバイクへと液体のように移動してゆく。すると、先ほどまで物言わぬ鉄の塊であったバイクがエンジンの轟きとともに唸りを上げた。何年ぶりに息を吹き返したのだろうか、とても埃を被って放置されていたとは思えない軽快なエンジン音を鳴らすそれは、バイク自身の喜びの声のようにも思える。

「おおおおお!」

 歓声を上げたのはクエンだった。"まさか動くとは……!"などと呟いている。

「マシン自体は本物だったようだな」

 レッドレーサーのキーを引き抜いたアカレッドが言うと、クエンは目を丸くさせて「何やったんだあんた!?」と詰め寄ってきた。

「"クルマジックパワー"を流し込んだ」

「で、でもよ、それって確か"車型星座"とかいうのから貰える力なんだろ? あんたハザード星人の生き残りなのか!?」

「いや。だが、これにはそれが宿っている」

 アカレッドはクエンの眼前にレッドレーサーのキーを翳して見せた。

「もっとも、今の状態で出来るのはこの程度のクルマジックパワーを放出する事ぐらいだが」

「何なんだい、そのキーは……?」

「激走戦隊カーレンジャーの力が宿ったレンジャーキーだ」

「激走戦隊カ~~レンジャァ?」

 なんの事か分からないと言った様子のクエンをよそに、レッドレーサーのキーをしまったアカレッドは背におぶった男の体を背負い直しながら、クエンに「この男の事を知らないか」と尋ねた。

「え……あ、ああ。そいつ、この通りを行ったところにある酒場の店主だよ。でも、確かザンギャックに連行されたって――」

「そうか、ありがとう。助かった」

 クエンの言葉を遮る形で礼を言ったアカレッドは、そのまま踵を返して通りの向こうへと歩いて行った。取り残されたように佇んでいたクエンは、傍らでまだ唸りを上げ続けているハザード星製のバイクを見て呆然とするばかりだった。

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Posted on 23:45:44 «edit»

Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅲ 

1章/Ⅲ:オイズの街


 街の入口に【ホバークラフター】を乗りつけたロブ達に礼を言い、荷台に寝かせていた遭難者の男を背に背負ったアカレッドはそのまま街の繁華街へと向かって行った。この街でザンギャックに追放された人間を背負ったまま歩くなど正気の沙汰ではなかったが、ここから自分達とは関わり合いのない話だ。

「やっとお別れだあ。 あんなやつと一緒にいちゃあ、こっちまで面倒ごとに巻き込まれちまうよ」

 自分達の行動が招いた事とはいえ、ハテッサは肩の荷が降りたような気分だった。ザンギャックを敵に回して得な事などありはしない。無関係を決め込むのが一番だ。

「おい、行くぞ」

「そうそう、さっさと行こう……って、何処行くんだよロブ!?」

 気付けばロブは【ホバークラフター】のエンジンを止めて運転席を抜け出していた。

「追うんだよ」

「追うって……あの赤い奴をか!?」

「ああ」

 正気の沙汰でないのは相棒も一緒だった。突然の心変わりに動揺したハテッサだったが、有無を言わさず歩き出してしまったロブを追って仕方なく……本当に仕方なく、深い溜息とともにその背中を追った。



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Posted on 23:53:21 «edit»

Category:紅の標

海賊戦隊ゴーカイジャー外伝『紅の標』 1章/Ⅱ 


1章/Ⅱ


 太陽がもしも無かったとしたら。
 太陽と呼ばれる恒星を中心としてひとつの体系を成す星々は降り注ぐ熱を失い、たちまちに凍りつくだろう。命を育むための光、大気、水、自然は連鎖的にそのバランスの均衡を崩す。それは星の終わりと言ってもいい。
そのような世界で人が生きていくことは出来ない。
太陽はまさに命の星なのだ。

 だが、今この惑星エイトの頭上に輝く太陽は、少し事情が違っていた。

『二重恒星太陽』……俗にそう呼ばれるこの太陽系の中心に存在するふたつの輝き。

だがその見かけや俗称とは裏腹に、この恒星は双子星という訳ではない。片方の天体は恒星自体が熱を発し、水素、ヘリウム、酸素、炭素、窒素、ケイ素……その組成物もまさに太陽のそれで出来ている。
しかし、この太陽に寄り添うようにして輝くもうひとつの光……それは星ではなく、"空間歪み"から溢れ出る膨大なエネルギーの吹き溜まりである。

 一説によればその発生は2万6千年以上前、亜空間に発生した"魔空空間"なるものを安定させるために放出されるエネルギーが空間を歪ませ、この太陽系に口を開けたのだという。その中には"魔空監獄"という異次元の牢獄が存在し、凶悪な犯罪者達が収監されているという噂も実しやかに囁かれている。

 つまりあの輝きは太陽などではなく、一種の"ホワイトホール"に分類されるものだ。しかし吐き出されるエネルギーは太陽のそれと違わぬ熱量を有しており、恒星と同等の質量も観測される、"擬似太陽"とでもいうべき状態で遥か以前からそこに鎮座し続けている。

 この星達もまた、昔からこの銀河の星達の命を育むための光を発してきた。どのような成り立ちであろうとも、この太陽系はこうして均整を保ってきた……そのはずだった。


 それが、どこでおかしくなってしまったのか……。



 砂に埋もれた大地に視線を落として、物思いに耽っていた男の足元をホバーエンジンの震動が揺さぶったのはその時だった。砂の上を這いずる生き物のように砂漠を突っ走る黄土色の車体――【ホバークラフター】と呼ばれるマシンが傾斜のきつい砂丘をひとつ乗り越えたらしい。
 【ホバークラフター】の荷台部分に座り込み、砂まみれの外套を着込み直して男は沈黙していた。
 運転席には銀色の肌をした男が二人……先ほどの出来事を遠巻きから見ていた連中が座り、荷台には砂漠で倒れていた遭難者の男も乗せられている。

「す、すまねえな兄さん、そんな荷台に乗せちゃって」

 銀色の肌の男が――甲高い声をした方は『ハテッサ』と名乗った――助手席から振り返って困ったような笑いを浮かべた。先ほどまでとは打って変わったその態度から、あのザンギャックを一人で片付けてしまった男に対しての恐れが窺い知れる。それは運転席に座るもう一人も――こちらは『ロブ』というらしい――同じようで、引きつった笑いを浮かべて車のハンドルによく似た操縦管を握り締めていた。

「いや、街まで送ってもらえるんだ。贅沢は言わないさ」

 目深に被った外套の奥から聞こえた声色は穏やかなもので、ハテッサとロブは内心で息をつく。あんな光景を見せられた直後に街までの案内を頼まれては断れようはずもない。遭難者を荷台に乗せるのも二人は手伝った。人助けは馬鹿のやる事などと言える余裕はなく、辺りに転がったザンギャック兵士達の残骸に背筋を寒くしながら男の頼みを聞いて車を発進させたまでだ。

「まったく、えらいのに絡んじまったなあ……」

「さっさと街まで行って降ろしちまおうぜ……」

 運転席の二人だけが聴こえる小声で囁きあったハテッサとロブは、自分達の取った軽率な行動をひどく後悔していた。こんなところをザンギャックに見られでもしたら、それこそ自分達にまで火の粉が降りかかる事になる。そうなってからでは遅いのだ。奴らに眼をつけられては、この星で生きては行けない。

「それに……ロブも見たよな?あいつのあの赤い体、最近この辺りの星で賞金首相手に暴れまわってるって噂の赤い奴って……」

「ごちゃごちゃ言うなって……!これ以上巻き込まれてえのかよ」

 ロブが溜息混じりにアクセルを踏み込んでホバークラスターのスピード上げると、吹き散らされた砂が車体の後方へと弾け飛んでゆく。頬を打つ風は力強くなったが、行く手は延々と続く砂の大地であり、進んでいるという実感に乏しい。エンジンの唸りだけが聞こえる沈黙の中で、ハテッサは居心地が悪そうに身を捩っていた。

「過酷な環境だな」

 矢先に荷台から聞こえてきた声でハテッサはビクンと身震いした。外套の男が砂漠を見つめながら呟いていた。

「……ま、まあね。この星の大地はほとんどこんな状況でさあ」

 無視を決め込むのも恐ろしかったので相槌を打つ。運転席でロブが"バカ野郎"とでも言いたそうに苦い顔をしていたが、もう遅かった。

「枯れた大地……あのふたつ並んだ太陽のせいか」

 外套の男が真上に視線をやる。突き抜けるような空の蒼の向こうから、その身を寄り添うようにして並ぶ太陽が"二つ"……本物の太陽と、渦巻くエネルギーの塊が並んでこちらを見下ろしていた。

「えーっと……干上がっちまったのは確かにそのせいなんだけど、原因は別にあって、そのぉ……」

 煮え切られない口ぶりのハテッサは、ちらちらと傍らのロブへと助けを求めるような視線を送る。ロブとしては俺に振るな!と怒鳴りたくなったが、ここで男の機嫌を損ねても得は無い。再度の溜息とともに憤りも吐き出し、やれやれとハテッサの代わりにその口を開いた。

「……この星も最初っからこんな干からびた星だった訳じゃない。森もあれば川もあったさ。動物だっていっぱいいた。だが、つい一年ほど前にザンギャックの実験場に選ばれちまってね。科学者が妙な爆弾を使いやがった」

「これもザンギャックの仕業か……」

「ああ。人体には危害を加えず、星の環境だけを変化させる戦略兵器の実験だったそうだ。大したもんだったよ、森も川も全部瞬く間に砂に変わっちまった。自然を失った動物達はあっという間に死んじまったよ。残ったのは人間だけだ」

 その言葉で男はハッとなった。今、ホバークラフターが走るこの砂漠の砂……これはただの砂ではない。

「この砂漠は、この星の"自然"と呼ばれていたものの粕で出来てんのさ」

 乾いた笑いが混ざったロブの言葉に、外套の男はギリッと拳を握った。星ひとつの自然を――それも多くの人々が住まう場所で、何という事を……!

「その爆弾は成層圏の高濃度オゾン帯までボロボロにしてくれてやがった。おかげであの二重恒星太陽に晒された地表は雑草ひとつ生える事もない……それが今の惑星エイトって訳だ」

 この星も、つい一年ほど前までは"地球"と変わらぬ自然豊かな星だったのかもしれない。だが、今はそれを幻視する事すら叶わない。面影はすべて消え去り、熱砂となって星を覆い尽くしている。

「キミ達は、自分の星をこんなふうにしてしまったザンギャックに対して何とも思わないのか」

 こんな暴虐が許されていいはずがない……外套の男は内心怒りに震えて彼らに尋ねたが、対称的に二人はどこか既に諦観めいたものを表情に宿していた。

「そりゃあ俺達だってあいつらは好きじゃないんだけどね……」

「今更嘆いたって仕方ねえのさ。この星はザンギャックの占領下だ。奴らに逆らえば死ぬ。なら逆らわない。それが生きるために必要な事なんだ、この星じゃあな」

 諦め。
 強大な力によって怒りさえも抑え付けられてしまった。
 これがザンギャックの侵略というものだ。今まで見てきたザンギャック占領下の星々でも、同じような表情をした人々がいた。敵わないのなら従うしかない……力による支配というのは原始的でありながら強力であり、拮抗出来る力が存在しなければ不変とも言える強固さを持っている。力を持たぬものは、ただ支配されるがままになるしかないのだ。
 今、この宇宙に広がっているこの恐怖支配を食い止めねばならない。そのためには――。

「あー……そういや兄さん、名前は? こんな星に何しに来たんだい?」

 重くなった場の雰囲気に耐えかねたのか、ハテッサは話題を変えようと外套の男に尋ねた。そういえばこちらからは名乗っていなかったなと気付くと、男は外套のフード部分を取ってその素顔を再び晒した。
 その肌は赤く、人間のそれではなかった。両眼は大きなゴーグルに覆われ、その下から力強く結ばれた口元が覗く。額の金縁のVラインが太陽光を反射して煌いた。

「私の名はアカレッド」

 男は、そう名乗った。 

『アカ、レッド……?』

 男が名乗った名を、ハテッサとロブが口を揃えて反芻した。
 アカレッド――赤でレッドなんて、同じ事を二回言ってるじゃないかと率直な感想が口をついて出そうになったが、そんなツッコミを入れる勇気はなかった。
 あまりにも見たままの名前に呆気に取られた二人を差し置いて、アカレッドは続ける。

「この星へは、人を探しにきた」

「人探し、ね……」

 誰を尋ねて来たのかは知らないが、こんな辺鄙な星まで来るとはご苦労なこったとロブが内心毒づいた矢先、【ホバークラフター】の行く手に街が見えてきた。この星に残る数少ない都市……というにはみすぼらしい、砂漠にポツンと佇むオアシスのような小さな街だった。

「あそこにいるといいけどな」
 
「ザイークという技術者だ」

「技術者?」

 この星に、わざわざ遠方から誰かが訪ねてくるような技術者がいただろうか。今のエイトには今日を生きるだけが精一杯の名も無い連中がいるだけで、よその星から頼ってくる者がいるとは意外な話だった。

「こいつを使えるようにしてくれる人物だ」

 言ってアカレッドが取り出したのは人を模した小さな人形だった。いや、一見すればそれは人形に見えたのだが、腰の部分で二つ折りに変形する機構が設けられている。

「それは?」

「"レンジャーキー"という」

 アカレッドの指先でカシャッと音を立てて形を変えた"レンジャーキー"は、その名の通り鍵の形となった。それが何処の鍵を開けるためのものなのかロブ達は分からなかったが、ザンギャックの連中に喧嘩を売ってまでここに来た男が持っている物だ、それがただの鍵でもおもちゃでも無い事だけは察しがつく。

 だから、先ほど失敗したばかりだというのに、ロブは持ち前の好奇心が首を擡げ始めて尋ねてしまった。「価値のあるもんなのか?」と。

「価値……か。そうだな、あるとするなら」

 アカレッドはその手に握る赤色のレンジャーキー……アカレンジャーのキーを見つめながら――

「戦士達の戦いの歴史と」

 ――今は遠い、銀河の彼方にある蒼い星の姿を思い返しながら―― 
 
「明日という扉を開くための、大いなる鍵だ」

 ――そう告げた。

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